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錆の原因は? |
鉄は乾燥した状態であれば安定した性質を持ち、サビが起こることはありません。しかし、空気と水に触れることで酸化還元反応(腐食)を起こし、金属表面に赤っぽい色の酸化水酸化鉄が発生します。これが赤サビです。赤サビは腐食が進行しやすく、鉄をボロボロに劣化させる性質を持っています。一方、黒サビは自然に発生することはなく、鉄表面を高温で熱するなどして発生させます。鉄の表面に酸化膜をつくるため、黒サビは赤サビの発生を抑える性質があり、「良質のサビ」と呼ばれています。
錆を抑える方法は? |
サビ止め塗料は文字通りサビを防ぐ効果のある塗料です。一般的なサビ止め塗料は、すでにあるサビの進行を止めることはできませんが、新たにサビが起きないように予防することはできます。サビの進行を止めたい場合は、赤サビから黒サビに転換するサビ転換剤や、特殊な強力防錆剤を配合した塗料を使用する必要があります。
2.酸で錆を洗う
すでにできているサビを洗浄・除去する方法には、酸を使って金属の表面に付着している酸化物を洗う酸洗処理があります。酸洗処理には塩酸や硫酸、リン酸などを使用し、中でもリン酸は鉄と反応してリン酸塩になり皮膜を作るため、防錆効果が期待できます。酸洗処理は危険性の高い薬剤を使用するので、安全性を考慮して適切に作業を行うことが重要です。
3.酸素や水を遮断する
塗料を塗るときにはサビを完全に除去することが大切ですが、場所によってはサビが除去しきれないケースもあります。その場合はサビの上から塗装できる素地調整補助剤を使用して、サビの進行を抑えることが可能です。素地調整補助剤をサビに塗ると酸素や水を遮断でき、金属の腐食が広がるのを防げます。理想はメンテナンスを定期的に行ってサビを発生させないことですが、発生してしまったサビの進行を抑えるには素地調整補助剤が有効です。
錆止め塗料とは? |
錆止め塗料は防錆効果のある物質を含む顔料を使用しているためサビを防ぐことができます。防錆効果のある顔料は鉛丹や塩基性クロム酸鉛、亜鉛末など多くの種類があります。また、水や酸素を遮断する塗膜を作ることでもサビの発生を抑えています。このことから、塗膜の厚さや使用されている樹脂によっても防錆効果が異なります。
錆止め塗料の種類は?
サビ止め塗料の成分は大きく「顔料」「樹脂」「溶剤」に区分され、サビ止め塗料はそれぞれの成分に何が使われているかによって種類が分かれています。それぞれの成分の代表的な種類をご説明します。
【顔料】
サビ止め塗料の顔料には鉛やクロム化合物が多く使われています。しかし、健康被害が懸念されることから、近年では鉛やクロム化合物を含まない環境に優しい顔料を使用することが増えてきています。
【樹脂】
サビ止め塗料に使用される樹脂は「エポキシ樹脂系」が主流です。エポキシ樹脂系のサビ止め塗料は防食性、耐久性が高く、防錆効果も優れているのが特徴です。高性能なため住宅の塗り替えでは頻繁に使用されています。
【溶剤】
一般的に塗料は、水で溶かす「水性系」と強溶剤や弱溶剤などで溶かす「油性系」があります。
水性塗料は臭いが少なく作業性に優れており、上塗り塗装や内装の塗装工事に向いています。
一方の油性塗料は塗膜に厚みがあることから防錆力が高いのが特徴です。特に強溶剤を使用したサビ止め塗料は密着性や耐久性にも優れています。しかし、臭いが強く既存の塗膜を溶かす場合もあるため、一般的には弱溶剤の油性系サビ止め塗料が使用されることが多いようです。
錆止め塗料の塗り方・効果とは? |
1.下地処理
【洗浄作業・ケレン作業】
サビ止め塗料を塗る前に、鉄部分のゴミや汚れを落とすために高圧洗浄をします。次に下処理として、サビや古い塗膜などを劣化具合にあわせて酸洗浄や電動ブラシ、やすりなどで削り落とすケレン作業を行います。ケレン作業はただサビ面をきれいにするだけでなく、次に塗る塗料が密着しやすいように表面を凸凹にする「目粗し(めあらし)作業」も兼ねています。そのため、サビがない場合でもケレン作業を行う必要があります。
下地処理が完了したら、塗料を塗らない部分に養生テープでマスキングをしておきましょう。
2.塗装
【サビ止め塗料を塗る】
準備が整ったら、サビ止め塗料を塗っていきます。サビ止め塗料以外の下地塗料には上塗り塗料との付着性を高めるプライマーが使用されるケースもあります。サビ止め効果を持った防錆プライマーを選べば、サビ対策も可能です。サビ止め塗料もプライマーも、金属面に直接塗ることで効果を発揮します。
【中塗り・上塗りをする】
錆止め塗料を塗り終わったら、塗料を塗っていきます。エポキシ樹脂系サビ止め塗料は高性能ですが、紫外線に弱いという弱点があります。錆止め効果を高めるには、耐候性の高い塗料で上塗りすることが大切です。硬化剤を使えば、塗料が固まるのを早めたり、固くしたりすることができます。錆止めを行っても、その効果が永続するわけではないため、定期的な塗り替えが必要になります。屋外の場合3〜4年程度が塗り替え目安となりますが、塗装面をチェックして異常を感じたら業者に確認してもらいましょう。錆止めと上塗りの効果を同時に得ることができる「上塗り兼用サビ止め特殊防錆剤」を使えば、塗装時間を大幅に短縮することも可能です。
3.サビ止め塗料の効果は下地処理が重要
サビ止め塗料の防錆性を最大限に活かすには、下地処理がなによりも大事な工程です。下地処理がしっかりできていないと、塗装がはがれやすくなったり、防錆持続効果が下がったりします。特にケレン作業はサビ止め塗装の要になり、作業を怠るとサビの予防や進行を抑えることができません。正しい塗装工事で建物を守るためにも、下地処理をきちんと行うことが大切です。